ポーカーのルールを理解してきて、ゲームをある程度経験してきたプレイヤーであれば、「エクスプロイト」というワードを聞いたことがある方は多いかと思います。
エクスプロイト戦略はGTO戦略と双璧をなすと言われるほど重要な戦略であり、マスターするとポーカーの勝率を高められると言っても過言ではありません。
そこで今回はエクスプロイトについて解説しますので、エクスプロイトの意味を知りたい方や、エクスプロイト戦略をマスターしたい方は参考にしてください。
ポーカーにおけるエクスプロイトとは
それではまず、ポーカーにおけるエクスプロイト戦略について解説します。
エクスプロイト戦略はGTO戦略を用いた戦略でありながら、全く異なる戦略となりますので、しっかりと意味合いをマスターしていきましょう。
エクスプロイトは対戦相手のミスや弱点によって戦略を立てる方法
エクスプロイト戦略とは、対戦相手のミスや弱点につけ込む戦略を指します。
ミスや弱点につけ込むためには、「相手は頻繁にベットしてくるな…」とか「フォールドが多い相手だな…」など対戦相手のわずかな隙を見逃さない洞察力が重要になります。

同時に弱点の付き方を理解していなければ、相手の傾向がわかったとしても手を打つことが出来ません。
対戦相手の隙をついて攻撃する戦略であるため、弱点を見つける洞察力と弱点をついて攻撃する方法をマスターしていく必要があります。
エクスプロイト戦略の基本的な考え方
エクスプロイト戦略のセオリーは「相手のアクションのバランスが崩れたところを狙う」ことがポイントになります。
ポーカーのアクションには、2択、または3択の選択肢が用意されています。
例えば場にチップが賭けられていない場合はチェックやベット、場にチップが賭けられている場合にはフォールドやコール、レイズの選択肢があります。

これらの選択肢にはバランスがあり、極端なアクションを繰り返しているとバランスが崩れてしまうことになります。
ここでいうバランスとは主にGTO戦略が元になっており、GTO戦略から大きく崩れるようなアクションをおこなうとバランスが崩れていると判断できます。
崩れたバランスを突くのがエクスプロイト戦略
エクスプロイト戦略は崩れたバランスを突く戦略ですが、場の状況に応じて相手のアクションバランスを良く観察しておく必要があります。
相手のアクションを注視することになりますので、相手の手役を考えることはもちろん、相手がどんなアクションを多くおこなっているのかを常に意識していきましょう。

相手の癖や弱点がわかれば、相手はバランスが崩れているということになりますので、攻撃できる準備が整った合図となります。
バランスが崩れているかどうかはGTO戦略が元になっていますので、まだGTO戦略をマスターしていない場合は、先にGTO戦略の習得から始めることをおすすめします。
エクスプロイト戦略は相手によって使い分ける
それでは、相手がどのようなバランスでプレイしていた場合にエクスプロイト戦略を仕掛けていけば良いのか、状況別で解説していきます。
エクスプロイト戦略を活用するためには、まずは相手のアクションを観察し、傾向を掴むことが重要です。
相手がチェックの頻度が多い場合の戦略
まずは、相手がチェックの頻度が多い場合、つまり場にチップが賭けられていない状況下での戦略を解説します。
場にチップが賭けられていない状況下で、相手が頻繁にチェックをおこなっている場合は、一般的には強い手役がチェックレンジに残っていることが多いです。
特に相手が先手などポジションがない場合には、ブラフキャッチやチェックレイズに構えている可能性もあります。
このような状況の場合、エクスプロイト戦略としては「通常よりもベットを控えてチェックを多くする」のが、最適です。
よくあるシチュエーションである、アウトオブポジションでのフロップCB戦略を紹介しましょう。

このシチュエーションでは
- フリフロップ:COがレイズ、BTNがコール、それ以外はフォールド
- フロップ:「QT4」が出現
となっており、COはベットとチェック、どちらを選択するか?というものです。
GTO戦略によれば、ここではチェックは約70%、ベットは約30%と出ています。
そのため、COは高確率でチェックを選択することになり、チェックにバランスが寄っていくことになります。
この傾向は、ある程度フロップを理解している初中級者が、おこないやすいプレイイングとなりますので、覚えておきましょう。
相手がベットの頻度が多い場合の戦略
それでは続いて、相手のベット頻度が多い場合の戦略を解説します。
ベットが多いケースとしては、ピュアブラフが多いケースとマージナルベットが多いケースが挙げられます。
初心者が多いとマージナルベットが多くなりがちで、逆に中級者以上だとピュアブラフが多くなる傾向があります。
マージナルベットが多いケースにおいては、エクスプロイト戦略としては「チェックやコールを増やしてレイズも増やす」のが得策です。

自分にポジションがない場合は、チェックレイズが非常に強力なカウンターとなります。
チェックを増やすことで、相手にマージナルベットのミスを誘発させるのがポイントです。
もし、相手がベットしてきた場合は、強い手役であればレイズでカウンターすると良いでしょう。
強い手役ではなく中途半端な手役だった場合は、大人しくフォールドするのが得策です。
一方、ピュアブラフが多いケースにおいては、エクスプロイト戦略としては「コールを増やしてレイズを減らす」のがポイントです。
リバーでワンペア等、中途半端な手役でコールを増やしていくのが得策です。
強い手役だと、ついレイズしたくなってしまいます。
しかし、ここでピュアブラフレンジを降ろしてしまうと、ナッツ級の強いバリューレンジのみコールされる状況になってしまい、損失が増えるためのレイズになるリスクがあります。
相手がフォールドの頻度が多い場合の戦略
それでは続いて、相手のフォールド頻度が多い場合の戦略を解説します。
フォールドの頻度が多いということは、それはいわゆる降りる頻度が多いプレイヤーを指しています。
エクスプロイト戦略としては、「ベット頻度を多くして、チェックコールを増やす」のが得策です。
ベット頻度を高くすることによって、より相手を降ろさせるのでわかりやすい戦略だと言えます。
チェックコールを増やしているのは相手にブラフをさせるためで、それなりに強いハンドでかつ逆転されにくい状況であれば、敢えてブラフさせるプレイも有用です。
それでは、よくあるシチュエーションとして、ドライボードにおける対コンティニュエーションベットをご紹介しましょう。

このシチュエーションでは
- フリフロップ:COがレイズ、BBがコール、それ以外はフォールド
- フロップ:「Q74」が出現
となっており、BBがチェックしたところCOがベットしてきた場合、BBはどうするべきか?というものです。
このように、高頻度でコンティニュエーションベットを打つプレイヤーに対して、フォールドが多くなりがちな状況です。
この場合は、Aハイカードやバックドアでのコールも、検討が必要なシチュエーションだといえるでしょう。
相手がコールの頻度が多い場合の戦略
それでは続いて、相手のコール頻度が高い場合の戦略を見ていきましょう。
相手のコール頻度が高いということは、ほとんどの場合どんなハンドであってもコールをしてくるコールステーションである可能性が高いです。

これは相手のフォールド頻度が少ないケースも該当するのですが、エクスプロイト戦略としては「ブラフベットをなくして、バリューベットのレンジを広げる」のが得策だと言えます。
プレイヤーによっては、フォールド頻度が少なく、そしてレイズの頻度も少なくなったことでコールの頻度が上がっている場合もあります。
その場合はベット額を低くして、さらにベットレンジを広げると良いでしょう。
相手がコールの頻度が少ない場合の戦略
それでは続いて、逆に相手のコール頻度が少ない場合の戦略を見ていきましょう。
コールがほぼ無く、基本的にレイズかフォールドかの2択で立ち回るケースとなります。
その場合のエクスプロイト戦略としては、「ベット額やレイズ額を下げる」のが得策です。
このような状況下に陥ることがあるのかと、思われるかもしれません。

レーキのあるキャッシュゲームや、バブルファクターの効いたトーナメントなど、コールが著しく弱くなるゲームがあります。
そのような状況だと、プリフロップにおいて、相手のレイズにコールせずにフォールドしたりリレイズしたりして立ち回るプレイヤーが多くなるのです。
そのため、レイズに対してコールドコールが発生しにくいフィールドにおいては、レイズ額を安くした方が有用です。
但し、初心者プレイヤーが多いケースでは、プリフロップでレイズに対してコールドコールが多くなるミスを犯しがちなので、敢えて大きいレイズ額で立ち回る戦略もあります。
相手がレイズの頻度が多い場合の戦略
続いて相手のレイズ頻度が、多い場合の戦略を見ていきましょう。
レイズの頻度が多いパターンは、先ほど解説したベット頻度が多いパターンに似ています。
つまり、ブラフレイズが多いケースやマージナルな強さでのレイズが関わっています。
そのため、エクスプロイト戦略としては
「レイズに対してのコールを増やして、エクイティを大きく放棄するようなハンドを、ベットフォールドレンジに入れない」
のが得策です。
ちなみに、エクイティを大きく放棄するようなハンドというのは、以下のようなペア系のハンドが代表的です。
それでは、具体的なシチュエーションを見ていきましょう。

このシチュエーションでは
- フリフロップ:COがレイズ、BBがコール、それ以外はフォールド
- フロップ:「Q72」が出現
となっており、BBがチェックしCOがベットしたところ、BBがレイズしてきた場合、COはどうするべきか?というものです。
ハイカードのような、そもそもエクイティがないハンドであれば、余裕を持ってフォールドできます。
弱いペア系のハンドを持っていた場合は、勝てる可能性はありつつもフォールドせざるを得ない状況、つまりエクイティ放棄に繋がることになるでしょう。
このようなハンドだった場合は、そもそもコンティニュエーションベットはせずに、チェックするのも有効な手だと言えます。
エクスプロイト戦略の注意点
ここでは、エクスプロイト戦略の注意点について解説します。
エクスプロイト戦略は決して万能ではありませんので、注意点をおさえて有効に活用していきましょう。
自分の戦略の傾向を見抜かれるリスクがある
エクスプロイト戦略は、相手の傾向や癖を見抜き、弱点を突く戦略です。
これは逆にいえば、相手も同じエクスプロイト戦略を活用していた場合は、簡単に戦略を使っていることが見抜かれてしまいます。

ましてや、エクスプロイト戦略を使っていたとしても、自分の癖が出てしまっていると弱点を突かれて攻撃されてしまうリスクもあります。
エクスプロイト戦略は、自分だけが使っているとは限らない、ということを覚えておきましょう。
相手の情報が足りないとエクスプロイトが使えない
エクスプロイト戦略は相手の情報があってこそ、初めて活用できる戦略です。
相手の情報が足りていなければ、エクスプロイトを使うことはできません。
初めてプレイする相手の場合、短時間で相手の傾向を掴む必要があるため、普段から鍛錬していないと弱点を見つける前に決着がついてしまう可能性があります。
初戦から集中してプレイして、相手の傾向を掴む感覚を養いましょう。
エクスプロイト戦略を使うためにはGTO戦略の知識が必要
冒頭で述べたように、相手の癖がどれくらいバランスが崩れているのかを判断している基準は、GTO戦略です。
エクスプロイト戦略を活用するためには、GTO戦略を理解している必要があります。
エクスプロイト戦略はGTO戦略とは全く異なる戦略ですが、だからといってGTO戦略を理解していなくても良いとはなりませんので、注意が必要です。
ポーカーにおけるエクスプロイトの意味まとめ
ここまで、ポーカーにおけるエクスプロイト戦略について解説しました。
エクスプロイト戦略についてまとめると、以下となります。
- エクスプロイト戦略は、相手の傾向を掴んで弱点を突く戦略である。
- 相手の傾向を見極め最適な手を繰り出すことで、勝率をアップさせる。
- エクスプロイト戦略を使いこなすには、GTO戦略の知識が必要不可欠。
- 初めての相手にエクスプロイト戦略を使うなら、瞬時に相手の傾向を掴む必要がある。
エクスプロイト戦略が理解できれば、GTO戦略と合わせて幅広く対応できるようになるでしょう。